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研究資料明細
[摘要] :
本稿は、2014年に張正ら社会運動家によって設立された移民工文学賞の誕生背景とその受賞作の分析を行うことで、多元文化社会を目指す現代台湾が従来「第二の他者」として排除してきた東南アジア出身をどのように社会の中に位置付けようとしているのかを考察するものである。東南アジア出身者への理解を求めて設立された移民工文学賞は、彼らに移民工といった「正名」を与え、母国語による創作を奨励することでその声を台湾社会に届けようとしてきたが、翻訳、校正、審査といった複数の他者の介入による共同創作といった性格をもつ同賞は、その過程で原作からの逸脱や誤読を繰り返してきた。また、社会問題に関心を持った台湾人読者を対象とした同賞は、彼らの「国語」から我々の「国語」へと翻訳されることによって、国内における言語的マイノリティや外国人花嫁を「購入」せざるをえない農村男性たちの声を抑圧するといった副作用をも生み出してきた。