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研究資料明細
[摘要] :
デビュー当初から常にその作風を変化させてきた王聡威は、「六年級」と呼ばれる同世代の作家たちのなかでも独特の地位を築いてきた。ポストモダンを基調としたデビュー当初の作風から新郷土文学への傾倒、そして都市生活における孤独を描いた作品など、その作風はまさに不断の変化を基調としてきた。本論では、新聞の三面記事から創作された作品、とりわけ「大阪市母子餓死事件」をモチーフとして描いた長篇小説『ここにいる(原題:生之静物)』を分析対象とすることで、王聡威が現代社会における孤独をいかに捉え、また描き出したのかを考察する。Twitterを使って執筆されたテクストは複数の登場人物たちの「つぶやき」によって構成され、読者は「藪の中」に迷い込んだように個々の抱える孤独に直面することになるが、本論はそうした「つぶやき」の背景に、台湾の民主化運動とそれによって設立した社区の存在に着目することによって前述した問題を明らかにする。