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研究資料明細
[摘要] :
成立当初から複数の言語で書かれてきた台湾文学において、台湾語は常に重要な位置を占めてきた。本論では、台湾における中国語文学が台湾語エクリチュールをどのように運用してきたのかを整理した上で、日本の翻訳者がそれらをいかに解釈・翻訳してきたのか考察する。中国語と台湾語のハイブリットな文体である郷土文学文体は、当初日本において中央の方言ともいえるべらんめえ口調に翻訳されてきたが、それは日本語訳における台湾語の階級イメージを生み出してきた。しかし、台湾語が義務教育に組み込まれ、台湾文学における多言語創作が進んだ2000年代以降、郷土文学文体は地域的な差異を表す方言として訳されるケースが増えていく。文体即ち政治といった台湾文学において、本土文化の象徴的存在でもあった台湾語エクリチュールをめぐる日本語訳は、翻訳の等価性を揺るがすと同時に、翻訳テクストにおける新たな日本語表現を生み出す触媒にもなっている。