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研究資料明細
[摘要] :
本論文では現代台湾文学に描かれた魔神仔(モシナ)表象の変遷に着目することで、魔神仔をめぐる言説がいかに台湾独自の文化を称揚する本土意識と結びつけられ、ナショナル・アイデンティティの問題として語られてきたのかについて分析する。従来魔神仔をめぐる言説は山地における怪奇譚として描かれてきたが、2000年代以降には失われた郷土を想像する文化的媒体として、主に童話の分野に登場していった。しかし、台湾本土文化への注目が高まった2010年代に入ると、魔神仔は台湾の歴史的文脈の中に位置付けられることで、本土文化を表象するアイコンへと変化する。こうした中、魔神仔の歴史化を進めることで台湾の文化主体性の確立を図った何敬堯や、魔神仔の越境性がもたらすアイデンティティの揺らぎを描く瀟湘神など、2000年代以降の魔神仔をめぐる表象の変遷は、現代台湾におけるナショナル・アイデンティティ確立の動きと密接に連動してきた。